後輩を育てるということ。

これから書くのは「後輩の育て方」ではなく、私自身の「後輩に仕事を教えた記録」です。
結論だけ先に書いてしまうと、「後輩とは対等な関係で仕事をしたかった」から「後輩の自立を促したかった」のだけれど、「後輩を自立させるには自分が離れること」が一番の育て方だったという話です。

新人の頃は「早く仕事を覚えよう」「技術を身につけよう」と考えることかと思います。私自身も、会社全体の生産性を上げるためには自分自身が成長すること、仕事の効率を上げようと考えながら仕事をしてきました。
しかし、やがて自分自身の成長や効率化だけでは限界が訪れてくるんですよね。自分は一人しかいないので、持てる仕事量は限られてきます。そうなったときに「だったら、自分を増やせばいい」と、後輩を育てることで会社全体の生産性を上げようと考えるようになりました。幸運にも、私は「OJTの担当」や「新人研修の講師」といった、後輩を育てる「仕事」を任されることが多く、育てることに注力することができました。(便利屋として使われていたとも言えますが……)

最初にOJTを担当したのは3年目の頃で、この頃はある程度の知識は身についてきたものの、私自身もまだまだやれることが多いと思っているなかでのOJTでしたので、そのとき自分が伝えられることを100%出し切ることで精一杯でした。また、当時の新人が技術面では十分な知識を持っていたこともあり、助けられた部分もあります。ただ、まだ「対等な関係」を促すことを考えるまでには至らなかったので、いつまでも「判断」は私自身に回ってきていました。

2人目の新人を担当したときは、私自身もそれなりに知識と経験を身につけていて(悪く言えば頭打ちになってきて悩んでいた頃)、「対等な関係」になってもらうための「自立」を意識しながら教えていました。考えれば答えにたどり着けるタイプの質問や相談に対しては、時間をかけてでもヒントから教えて、考え方を学んでもらうようにしてもらいました。どうしてこうする必要があるのかを正しく理解すれば、最終的な判断を求めることなく、自分で責任をもって仕事ができると考えたからです。
特に、この時担当した新人は自分の考えに自信を持てず、結果を求めたがるタイプに見えたので、仕事を任せて成果を上げていくことで自信がついてもらえたらと思いました。
知識だけではなく、仕事の取り組み方を変えていこうとするには、中長期的に取り組んでいく必要があるので、一緒に仕事をしているときはなかなかそうした姿勢を見ることはできませんでした。最終的に私自身が異動で離れたことが、一番の「後輩の育て方」だったということに気が付いたときは、色々思うところがありました。

OJTとして担当した新人はもう一人いるのですが、その人は論理的に物事をとらえることがうまく、過程を説明するとすぐに理解してくれる優秀な新人でした。「自立」という観点ではまだまだだったと思いますが、自分の受け持っている仕事への責任意識はとても高く、特別なことを教えることなく自分で見つけられるだろうという安心感がありました。

最終的に、3人とも現在は別の部署で働いているため「対等な関係」で仕事をすることは実現できませんでしたが、別の部署にいるからこそ、そこでは他の同僚とも対等に仕事ができているのだと思います。
思えば私自身も、新人の頃に教えていただいたOJT担当の人が異動してしまったときに、初めて責任をもって仕事をするようになったように思います。教えることは難しいなと思っていましたが、後輩を本当に成長させるには、知識を「教える」のではなく、責任を「与える」ことなのだなと、私自身が勉強になりました。

年次が経つと色々なことを考えてはもがきながら仕事をしてしまいますが、これからも驕らずに後輩とともに(もちろん先輩とも)仕事を進めていきたいです。
それこそ、まだまだ新人の気持ちで、自分の成長と、仕事への期待を持ちながら。